脊髄損傷は、外部からの大きな力が脊椎にかかることで、骨折や脱臼となり発症します。中心性頚髄損傷は、骨折などは認められません。しかし、運動麻痺や疼痛、びりびりするような両上肢や手指の痺れがある場合があります。その原因は、頚部が急激に後ろに反り返る運動(過伸展)によるものと考えられています。

また、この傷病は、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症を発症している中年以降の被害者に症状が発生するケース多いと報告されています。例えば、ちょっとした追突などで発症することも報告されています。

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上肢を支配する神経線維は頚髄の中心寄りで、脚部では外側寄りに位置しているので、中心部が損傷を受けると、神経線維が集中している上肢に多く影響がおよびます。そのため、上肢の症状が強く、運動麻痺や疼痛、びりびりするような手指の痺れ等の巧緻運動障害を引き起こします。痺れは角に肘をぶつけたときのような痺れが続きます。

頚髄の辺縁部は、まわりを囲む多くの血管によって栄養を受けています。中心部は中心動脈から広がる毛細血管から栄養を受けています。ですので、頚髄中心部は損傷を受けやすく、回復しにくいという特徴があります。

神経学的検査では、中心性頚髄損傷を次のように確認しています。


ホフマン反射        トレムナー反射

ワルテンベルグ徴候



神経学的検査では、深部腱反射が亢進、ホフマン、トレムナー反射があるか。ワルテンベルグ徴候では病的反射が出現し、両上肢は筋萎縮でやせ細ります。そして、箸を使用した食事ができない等の手指の巧緻運動障害がみられるようになります。


中心性頚髄損傷のMRIのT2強調画像(※)です。
C6の右横の脊髄に白い高輝度所見が確認できます。
この被害者は、脊髄症状で7級4号が認定されました。



自賠責の調査事務所は、上記の高輝度所見を認定の要件としています。この画像所見が確認できるのは、受傷後の急性期(2~3か月)に限られているといわれています。慢性期だとT1強調画像(※)で軟化型損傷を発見、立証する必要があります。しかし、画像所見が得られにくいことが多く、症状を立証することは容易なことではありません。

※T1強調画像=体内の脂肪分を強調して撮影する方法。椎間板の突出や出血の状態を確認するのに有効です。全体的に黒っぽく、コントラストがハッキリして見えます。

※T2強調画像=体内の水分を強調して撮影する方法。髄液や膀胱内の状態を確認するのに有効です。全体的に白っぽくぼやけているように見えます。

中心性頚髄損傷の治療方法は、受傷直後48~72時間以内に、入院下でステロイドを大量投与すれば、治療効果が得られるといわれています。この治療方法は1997年から厚生労働省の認可のもとに臨床使用が開始されています。しかし、現実では確実性の部分について疑問視されています。副作用の検証がされていない、若く再生力の強い患者以外では効果が薄いとの報告もされています。やはり、脊髄損傷なので劇的な改善はありません。

中心性頚髄損傷では、膀胱障害が認められることもあります。その立証方法は泌尿器科でウロダイナミクス検査をおこないます。この場合の症状固定のタイミングは、事故による不可逆性の脊髄損傷なので、受傷後6か月で決定されます。

中心性頚髄損傷の後遺障害のポイント

(1)中心性頚髄損傷の70%は偽物
中心性頚髄損傷は診断されていても、MRIで高輝度所見が認められない頚椎症、単純なむちうちでの症状過多というものも混在しています。ですので、中心性頚髄損傷の70%は偽物と言われています。

被害者が両上肢の痺れを訴えただけで、事故直後すぐに入院を促し、ステロイド治療を実施する病院があります。この治療終了後、MRI撮影をしても高輝度所見が確認できない場合は、本来であれば「中心性頚髄損傷ではなく、頚椎症でした」と傷病名を訂正する必要があります。この訂正をおこなわずに退院させてしまう医師が多いことが70%もの偽物の原因といわれています。

(2)中心性頚髄損傷の立証方法について
中心性頚髄損傷は脊髄損傷なので、むちうちのカテゴリーには入りません。症状を立証するためには、早期のMRI撮影で高輝度所見を確認する必要があります。

後遺障害の立証方法は、後遺障害診断書以外に「脊髄症状判定用」 の用紙を提出します。肩・肘機能、手指機能、下肢機能、上肢・下肢・体幹の知覚機能、膀胱機能、日常生活状況について、検査と結果の記載を医師に依頼しましょう。

(3)中心性頚髄損傷の等級について
等級は、神経系統の機能の障害で審査されます。障害の程度によって9級10号、7級4号、5級2号が認定されます。膀胱機能障害も、併合の対象とされます。