肩関節は肩甲骨の浅めのソケットのような形状に上腕骨がぶら下がっているという、とても不安定で頼りなさげな構造になっています。骨同士の連結もありませんので、脱臼しやすくなっていますが、その分非常に大きな可動域を持っています。

バイク、もしくは自転車に乗って走行している際の衝突などによって転倒した際、体を支えようと地面についた方の腕が、横後ろや上方に無理に動かされたとき、上腕骨頭が不安定となって関節面を滑り、脱臼します。転倒した時に肩の外側を強く打ち付けたとき、腕を横後ろ側に無理に持っていかれたときなどにも脱臼をすることがあります。脱臼の90%以上のケースは上腕骨頭が体の前に向かって移動する前方脱臼とされています。

前方脱臼の他にも、転倒時に体の前に向かって腕をつっぱった時や、肩の前面を強く打った時に発生する後方脱臼、上腕を横から上に向かって無理に動かされたときに発生する下方脱臼という種類があります。

治療法は、手術を選択することは少なく、画像のような外旋位固定を3週間ほど続けます。

後遺障害認定のポイント

① 肩関節脱臼という傷病名であれば肩関節の機能障害が認められる可能性が高いため12級6号が想定できます。しかし、むやみに治療を長引かせて症状固定の時期を遅らせてしまうと、肩関節の運動痛で14級9号の認定、もしくは後遺障害には該当しないという結果まで考えられます。治療期間は6か月経過で、症状固定というのが目安となります。

② 合併症については、若年者においての肩関節脱臼では、関節包が肩甲骨の側から剥がれるか破れる、中年以降の場合では腱板(関節をつつむ筋肉)が上腕骨頭についている部位で断裂を起こすことがあります。

さらに脱臼に伴って肩や腕や手に向かう上腕神経叢が損傷されることもあり、特に中年以降においては高確率で起こります。他にも上腕骨頭の外側、前方にある骨の突起(大結節・小結節)が骨折するケースがあります。

ちなみに、まれなケースですが後方脱臼は専門医以外では、およそ60%も見逃されることがあるとされています。ですので、最初に治療を受けた先で肩の痛みに対する説明が特に無く、痛みが続く場合は専門医を受診しましょう。

もし合併症を伴っているとしたら、12級6号ではなく10級10号の認定も予想できます。

ただし、外れても簡単に戻せる亜脱臼、腕が全体的に数分間しびれるような症状を起こすデッドアーム症候というのも本質的には脱臼と同じ損傷ではありますが、後遺障害にはなりません。

③ 肩関節脱臼の立証については、脱臼があるからといって自賠責の調査事務所がスムーズに認定してくれるわけではないため、CT撮影とMRI撮影が必須となっています。CTは関節の安定性を重視しなければならないため、バンカート部位(肩甲骨関節窩下縁前方)とヒル・サックス部位(上腕骨骨頭後外上部)の撮影を行います。