肩関節
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上腕は、肩関節からぶら下がっている二の腕のことを指し、上腕骨近位端は、肩関節の近くの部分のことを指します。上腕骨近位端骨折は、骨折をした部位と骨片の数によって、重傷度と予後、治療法が決定されます。上のイラストは、骨折をした部位と骨片の数による分類表です。臨床上、このケースの骨折は、骨頭、大結節、小結節、骨幹部の4つに分けられます。

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上腕骨近位端骨折は、交通事故においては、肩を地面に打つことで発症します。特に高齢者の場合は、転倒などの軽い外力によって、手をついただけでも骨折をするケースが多く、股関節部の大腿骨近位端骨折、手関節部の橈骨遠位端骨折、脊椎圧迫骨折と並んで、高齢者に多くみられる骨折となっています。この背景には、骨粗しょう症があります。

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全面右       後面右        外側

上腕骨の大結節と小結節は、上腕骨骨頭部で肩関節を構成している部分のことです。前面右図でいうと、上部左側にある小さい盛り上がりが小結節で、上部右側の大きな盛り上がりが大結節となります。

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左:上腕骨が肩甲骨の関節窩に衝突、大結節が骨折した状態。右:大結節が肩峰に衝突して骨折した状態。

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棘上筋が引っ張られることで大結節がはく離骨折した状態

もし骨頭でずれが無いとしたら、およそ3週間三角巾を使って固定をする治療で十分です。ただし、転位していると認められたら、X線透視下に徒手整復(手を用いて骨折や関節の脱臼の整復を行う手技のこと)を実施し、ギプスで4週間固定をして治療していきます。脱臼を整復すれば骨折も整復されることが多いためです。

また、大結節は、軽い転位でも肩関節の炎症を起こしやすくなっているため、皮膚の上からKワイヤーやラッシュピンを用いて固定するのが主流です。

小結節と骨幹部は、いずれも観血的(皮膚を切開して手術をすること)整復固定術を用います。具体的には、髄内釘やプレート固定を実施します。症状固定時期は、高齢者の場合でも受傷から6か月が目安となっています。後遺障害認定に関しては、肩関節の機能障害が認められて、12級6号、10級10号の可能性が見込まれます。

小結節や骨幹部において転位が大きくなっている場合は、骨頭壊死を引き起こす可能性が高くなっています。上腕骨頭が壊死したとしたら、人工骨頭置換術を行います。骨粗しょう症が進行した高齢者の場合だと、高頻度で壊死のおそれがあります。

後遺障害認定のポイント

① 肩関節の機能障害、つまり可動域制限と骨折部の疼痛が後遺障害の対象です。

部位 主要運動 参考運動
肩関節 屈曲 外転 内転 合計 伸展 外旋 内旋
正常値 180° 180° 360° 50° 60° 80°
8級6号 20° 20° 40°
10級10号 90° 90° 180° 25° 30° 40°
12級6号 135° 135° 270° 40° 45° 60°

認定される等級は、機能障害においては8級6号、10級10号、12級6号から、痛みの神経症状においては12級13号、14級9号から選択されます。

② 高齢者であれば10級10号の認定が期待できるのか。反対に若年者の場合はどうか。

高齢者であれば10級10号が期待できるということではありません。上腕骨頭頚部骨折の場合でも、グレードの高い骨粗しょう症でもない限り、症状固定後のリハビリをしっかりと行えば、骨の癒合は良好に得られるからです。2分の1以下の可動域制限が残ることは、ほぼないと考えられます。ただし、正常値の180度まで改善することもありません。よって、症状固定時期の選択によって、12級6号の認定を得るのが最も現実的な選択になります。そのためには、症状固定前にむやみにリハビリ治療を長引かせないことです。

若年者の場合では、転位=ずれていると認められない骨折は治癒していきますので、後遺障害を残すことはありません。大結節骨折の治療でKワイヤーやラッシュピンを実施、もしくは小結節の骨折の治療で皮膚の上から髄内釘やプレート固定を実施したものは、CTの3D撮影にて変形骨癒合が立証された上で症状固定の時期を誤らなければ、12級6号か神経症状の14級9号認定の可能性があります。

③ 角度だけで等級が決定されるのか

2分の1以下なら何の支障もなく10級10号が認定されると解説しているサイトがいくつかみられます。しかし、可動域制限は、なぜ制限されているのかという原因をしっかりと緻密に立証していかなければなりません。ポイントは骨癒合で、この点のチェックが厳しくなっています。

自賠責の調査事務所は、角度だけの10級10号の場合は、「高度な可動域制限が発生するとは考えられない」として、10級10号ではなく12級6号、場合によっては非該当になることもあります。ともかく、2分の1以下まで制限されているとしても、10級10号を獲得することは簡単ではないとご理解ください。