1 事故発生
40代の男性が、赤信号に従って停車していたところ、後続車に追突され、頚椎捻挫の傷害を負いました。
事故後は、頚部の痛みや左手のしびれなどの症状に加えて、その症状によって仕事が思うようにできないこと等をきっかけに、抑うつ状態などの精神症状も生じるようになりました。
2 相談・依頼のきっかけ
依頼者は、整形外科への通院と並行して精神科への通院も必要となり、抑うつ状態が悪化して就労が困難となって、休職を経て退職せざるを得ない状況となりました。
今後の対応に不安を感じた依頼者は、当事務所にご相談に来られ、以降の対応をご依頼いただくこととなりました。
3 当事務所の活動
当事務所の弁護士は、頚部の症状が症状固定となった段階で被害者請求を行い、後遺障害14級9号(局部に神経症状を残すもの)の認定を受けました。
また、抑うつ状態についても、通院先の医療機関から症状の発症経緯や症状固定時の所見に関する資料を取り寄せ、追加の被害者請求を行いました。
非器質性精神障害は、他覚的な所見に乏しく、事故との相当因果関係が争われやすいことから、後遺障害として認定されることが難しい類型とされています。
しかし、症状の推移や治療経過を踏まえた適切な資料を提出したことにより、抑うつ状態についても後遺障害14級9号の認定を受けることができました。
頚部の後遺障害と抑うつ状態の後遺障害はいずれも14級であったため、併合の結果、後遺障害併合14級の認定となりました。
これにより、後遺障害併合14級に対応する自賠責保険金75万円を確保しました。
その後、当事務所の弁護士は、加害者側の任意保険会社に対して示談交渉を行いました。
しかし、保険会社は弁護士を選任した上で、実質的にゼロ回答というべき提案しか行わず、交渉での解決が困難な状況となったため、当事務所の弁護士は依頼者と協議の上、訴訟を提起しました。
4 当事務所が関与した結果
訴訟では、保険会社の弁護士は、請求の全てを否定し、次のような主張をしてきました。
・事故は徐行程度の低速度での接触であり、身体への衝撃は軽微であって、頚椎捻挫や精神症状が生じるはずがない。
・精神科医の意見書を提出し、抑うつ状態と事故との相当因果関係を否定する。
・後遺障害等級の認定は訴訟における判断とは別であり、これに従う必要はない。
これに対し、当事務所の弁護士は、次のとおり反論を展開しました。
・低速度での衝突であっても、頚椎の生理的可動範囲内でむち打ち症状が生じ得ることを示す医学文献を根拠に、いわゆる閾値論を否定。
・車両の修理費用や事故直後の記録等の客観的な証拠をもとに、衝突の程度が軽微であったとはいえないことを主張。
・相手方が提出した精神科医の意見書について、検討した診療記録の記載がなく、原告の主治医の所見とも整合しない内容であることを指摘し、反証としての価値がないことを主張。
・裁判例を踏まえて、抑うつ状態と事故との相当因果関係、及び素因減額に関する判断枠組みを整理して主張。
当事務所の弁護士が適切な反論を展開した結果、裁判所から保険会社の弁護士の主張を全て排斥した内容での和解案が示され、390万円の支払による和解が成立し、上記の自賠責保険金75万円を加えて、合計465万円の獲得となりました。
訴訟における主な損害項目は、次のとおりです。
| 主な損害項目 | 獲得額 |
|---|---|
| 休業損害 | 119万円 |
| 傷害慰謝料 | 120万円 |
| 後遺障害逸失利益 | 88万円 |
| 後遺障害慰謝料 | 110万円 |
| 調整金 | 22万円 |
【獲得額に関するご注意】
解決事例のご紹介においては、獲得額(獲得合計額)を記載させていただいておりますが、保険会社から医療機関に対して直接支払われる治療費等を含めない金額となっております。
他の事務所のサイトでは、こうした治療費等についても獲得額に含めて、金額を大きく見せている例が散見されます。
しかし、こうした治療費等はお客様の手元に残るものではなく、サイトを閲覧する方に誤解を与えかねないという点で、不適切な表記であると考えております。
そこで、当事務所では、お客様の手元に支払われる金額を獲得額として記載させていただいております。
5 解決のポイント(所感)
非器質性精神障害は、他覚的な所見に乏しいことから、後遺障害等級認定においても訴訟においても、事故との相当因果関係が争われやすい類型です。
本件では、主治医の所見を丁寧に整理し、適切な資料を追完して被害者請求を行ったことで、頚部の後遺障害に加えて、精神症状についても後遺障害14級9号の認定(併合14級)を得ることができました。
また、訴訟においては、保険会社の弁護士から、事故態様の軽微性や医師の意見書を根拠とした因果関係の否認など、様々な反論がなされましたが、医学的知見や裁判例を踏まえて的確に再反論を行った結果、裁判基準に沿った内容での和解を実現することができました。
非器質性精神障害による後遺障害が問題となる事案では、通院先の医療記録の丁寧な収集・整理と、専門的な知見を踏まえた反論の組み立てが重要となります。










