1 事故発生

20代の女性が、自動車を運転して優先道路を走行中、信号機のない丁字路交差点で、交差道路(脇道)から進入してきた加害者運転の自動車に衝突され、頚椎捻挫などの傷害を負いました。

2 相談・依頼のきっかけ

交通事故から約半年後にうつ病との診断を受け、入通院を経て、交通事故から1年8か月ほど経過した段階で相談に来られ、「保険会社は、交通事故から8か月目までの頚椎捻挫の治療に関する部分の補償しか認めないと言っている。」、「うつ病など今も残ってしまっている症状についても、保険会社には補償を考えてもらいたい。」とのことで、以後の対応をご依頼いただきました。

3 当事務所の活動

当事務所の弁護士は、うつ病についての後遺障害診断書や必要書類を取り付けた上で、後遺障害等級認定申請(被害者請求)を行いました。
しかし、自賠責保険の調査事務所では、交通事故によってうつ病を発症したとは認められないとして、非該当(交通事故との因果関係を否定)の判断でした。
この結果に対して、当事務所とも関係のある士業事務所に依頼して異議申立てを行いましたが、非該当の判断は覆りませんでした。
そこで、当事務所の弁護士は、交通事故がうつ病の発症の少なくとも一因となっていることは医療記録などによって証明可能であるとの判断のもと、依頼者の意向を踏まえ、裁判での後遺障害の認定を目指して、訴訟を提起しました。

4 当事務所が関与した結果

裁判で、当事務所の弁護士は、怪我の痛みからくるストレスや、体が思うように動かないことによる職場でのストレスなどは、交通事故に起因するストレスであり、交通事故がうつ病の発症の原因であると主張して、医療記録に基づいて綿密に立証していきました。
保険会社の弁護士は、自賠責保険の調査事務所の判断は正当であるとして、交通事故から8か月目までの頚椎捻挫の治療に関する部分が、損害の限度であるとの主張をしてきました。
その後、依頼者の本人尋問を実施し、判決となりました。

判決では、交通事故に起因する様々なストレスがあったことが認められ、交通事故がうつ病の発症の一因であるとして、後遺障害9級相当と認定されました。
ただし、うつ病の発症の主な原因が交通事故以外にあったとの認定により、7割の素因減額がなされて、全損害のうちの3割を加害者の負担とすることとされました。

この判決について、当事務所の弁護士は、依頼者と相談した結果、7割の素因減額はやむを得ないものとして、控訴はしない方針となりました。
そして、保険会社の弁護士も控訴せずに判決が確定したことで、遅延損害金を含めて790万円の獲得となりました。

5 解決のポイント(所感)

脳に損傷が認められない非器質性精神障害(うつ病やPTSDなど)について、自賠責保険の調査事務所は、後遺障害の認定に消極的であり、特に交通事故から一定期間経過した後に発症したという場合には、交通事故との因果関係が否定されて非該当となる傾向にあります。
そして、自賠責保険の後遺障害等級認定で非該当の場合、裁判で後遺障害が認められるためには、主張と立証の両面において非常に多くの困難を伴います。
もっとも、裁判では、交通事故が精神障害を発症した一因であるというところまでを証明できれば、一部とはいえ損害の賠償は認めるという割合的な解決がなされることもあり得ます。

本件では、交通事故がうつ病の発症の一因となっているという主張・立証が認められ、割合的とはいえ、自賠責保険の後遺障害等級認定の判断を覆す判決を得ることができました。
交通事故により依頼者の生活は一変してしまいましたが、自分の思いや主張を裁判官にきちんと伝えて、本人尋問の手続をしっかりと乗り越えられた依頼者の姿を見ると、きっとこれからの困難を乗り越えて行けるだろうという思いを持ちました。

6 お客様の声

山口弁護士さんには、交通事故の件で約2年程担当して頂きました。
初めての事故でどうすれば良いのか分からないところを、行政書士さんも混じえながら対応して頂きました。
また、私の心身の不調がありながらも裁判の際は支えて頂き、無事に解決できました。
ありがとうございました。

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