後遺障害による逸失利益は、「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という式により算出されます。
労働能力喪失率とは、後遺障害により労働能力を喪失する割合のことをいいます。
労働能力喪失率は、例えば交通事故により寝たきりの状態になった場合は100%と分かりやすいのですが、むちうちや関節の可動域制限などの場合は明確な率を判断するのは難しいと言えます。
そこで、労働省が後遺障害等級ごとに労働能力喪失率を定めた基準が、逸失利益算定の際の標準値とされています。
その基準は次の表のとおりです。
等級 | 労働能力喪失率 (標準値) |
---|---|
第1級 | 100% |
第2級 | 100% |
第3級 | 100% |
第4級 | 92% |
第5級 | 79% |
第6級 | 67% |
第7級 | 56% |
第8級 | 45% |
第9級 | 35% |
第10級 | 27% |
第11級 | 20% |
第12級 | 14% |
第13級 | 9% |
第14級 | 5% |
上記の基準は標準値であり、被害者の職業、年齢、性別、後遺障害の部位・程度、事故前後の就労状況や減収の程度などを考慮して、標準値よりも高い労働能力喪失率が認められることもあります。
例えば、タクシー運転手(男・65歳)の右肩、左膝、左足の各関節機能障害、下肢の疼痛等で併合8級(標準値は45%)とされた後遺障害に対し、長時間一定の姿勢を取ることを強いられる職業運転手としての業務はほぼ不可能になったとして、労働能力喪失率を60%とした裁判例があります。
また、会社員(女・31歳)の左足関節機能障害(12級)と複視(14級相当)で併合12級(標準値は14%)の後遺障害に対し、左眼周辺の痛み、眼精疲労、左眼流涙症、左眼周囲不快感の症状が残り、パソコン操作や自動車運転がしづらい等の種々の支障が生じていること、就労時間が8時間から4時間程度に減少したことに伴い収入が減少していること等から、20%の労働能力喪失率を認めた裁判例があります。
事案によっては、期間に応じた労働能力喪失率の逓減を認めることもあり、例えば症状固定時からの10年間は40%、そこから先の10年間は20%と認めるなどのケースもあります。
一方で、男性の外貌醜状や歯牙の欠損など、労働能力の喪失が認められないとして、逸失利益が否認されることもあります。