弁護士木村哲也

交通事故による怪我が原因で治療期間中に家事ができなかったり、家事に支障があったりした場合には、休業損害が認められます。また、後遺障害や死亡によって、将来的に家事ができなくなったり、家事に支障が生じることとなったりした場合には、逸失利益が認められます。

家事労働については、給料などの対価が与えられるものではありませんが、買物・炊事・掃除・洗濯・育児など、家庭を維持するのに不可欠な重要な働きと言えます。そこで、交通事故の損害賠償の世界では、家事労働に対して金銭評価をして、休業損害や逸失利益を認めることとなっています。

家事労働に対する金銭評価としては、女子労働者の平均賃金が採用されます。そして、治療期間中に怪我が原因で家事にどの程度の支障があったのかを踏まえて、休業損害の額が算定されます。また、死亡事故の場合には、将来的に全く家事ができないものとして、逸失利益の額が算定されます。後遺障害の場合には、後遺障害の内容や等級に応じて、将来的にどの程度の期間にわたって、家事にどの程度の支障があるのかを踏まえて、逸失利益の額が算定されます。

裁判基準での具体的な算定例を挙げますと、平成27年の女子労働者全体の平均賃金は372万7100円ですので、1日当たり372万7100円÷365日で1万0211円となります。そして、事故後30日間は入院して家事が全くできず、退院後・症状固定までの300日間にわたって家事に80%の支障があったとします。この場合の休業損害の計算式は、次のとおりとなります。

(計算)
1万0211円×100%×30日=30万6330円
1万0211円×80%×300日=245万0640円
合計:275万6970円

また、別の算定例として、後遺障害12級の認定を受けて(労働能力喪失率を14%とする)、家事への支障が10年間継続すると考えられる場合の逸失利益の計算式は、次のとおりです。

(計算)
372万7100円×14%×7.7217(10年に対応するライプニッツ係数)
=402万9136円

なお、家事労働の金銭評価については、上記のとおり、女子労働者全体の平均賃金を用いるのが原則ですが、高齢の場合や家事の負担状況などによって、減額調整がされる場合もあります。例えば、高齢の主婦の場合ですと、全年齢平均賃金ではなく、年齢別平均賃金を用いるなどするのが通常です。

交通事故に関するQ&A一覧

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