死亡事故による損害賠償請求の権利は、被害者が亡くなったことにより、各法定相続人が法定相続分に従って相続します。
その際に、特別受益を考慮して具体的な取得額を計算することは、行われないのが原則です。
ここで、特別受益とは、特定の法定相続人が被相続人から生前贈与などの特別な利益を受けた場合に、遺産分割において、その法定相続人の遺産取得額を特別受益の分だけ減らして、各法定相続人間の公平を図る制度のことを言います。
この点、死亡事故による損害賠償請求の権利は、金銭の支払を請求することのできる債権です。
このような金銭債権は、現金と同視すべき預貯金(※)を除いては、法律上、遺産分割の対象外とされるのが原則です。
※預貯金も、金融機関に対して払戻を請求することのできる権利という意味で、金銭債権の一種です。
そして、特別受益は、遺産分割におけるルールです。
そのため、死亡事故による損害賠償金については、遺産分割において適用されるべき特別受益の制度の対象外と考えられているのです。
なお、生前贈与を受けた法定相続人との話し合いで、特別受益を考慮した損害賠償金の分配に同意してもらえるのであれば、その法定相続人の取得額を減らすという対応も可能です。
ただし、これを拒否されてしまえば、その法定相続人の取得額を強制的に減らすことを可能とする法的な根拠はありません。