生活保護法63条により、受け取った損害賠償金の範囲で、事故発生日以降の生活保護費を返還しなければならないのが通常です。

【生活保護法63条】
被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

交通事故の被害に遭った場合、示談・裁判で金額が確定していなくても、事故発生の時点で加害者に対する損害賠償請求の権利を取得します。
そして、行政実務では、損害賠償請求の権利を取得する事故発生の時点で、「資力がある」と評価されます。

そのため、生活保護法63条により、事故発生日以降に受給した生活保護費と最終的に受け取った損害賠償金を比較し、いずれか低い方の金額を返還することになります。
例えば、月額10万円の生活保護費を事故発生後に12か月間合計120万円を受給し、交通事故による損害賠償金として100万円を受け取ったとします。
この場合の返還額は、100万円となります。

なお、返還の範囲は、福祉事務所などの裁量によります。
そのため、必ずしも全額の返還を求められるとは限りませんが、損害賠償金のうち比重の大きい慰謝料や逸失利益などは、返還を求められる可能性が高いと考えられます。