1 交通事故による股関節骨折の概要

股関節は足の付け根にある関節であり、具体的には、大腿骨の上部(大腿骨骨頭)と骨盤側の受け皿になる寛骨臼から構成されます。
そのため、股関節骨折というのは、大腿骨の上部周辺や寛骨臼が骨折することを指します。

股関節骨折は、転倒した拍子に股関節部分を強打した場合にも生じ得るのですが、交通事故によって受傷する典型例としては、自動車の正面衝突などの際に、運転手が膝をダッシュボードに勢いよくぶつけることで発生することが挙げられます。
また、股関節骨折に至らなくとも、股関節脱臼となることも珍しくありません。

2 股関節骨折で後遺障害が認められるケース

股関節を骨折すると、立ったり歩いたりするのが非常に困難になります。
骨折自体は2~3か月で治ることがありますが、治ったとしてもすぐに歩けるようになるわけではないため、多くの場合、6か月以上のリハビリが必要となります。
なお、高齢者の場合、骨粗しょう症も相まって、転倒しただけで発生する可能性が高く、若年者に比べて治りにくい骨折箇所と言われています。

もっとも、治療・リハビリを行ったとしても、後遺障害(後遺症)が残ることも珍しくありません。
股関節骨折による後遺障害の症状としては、大きく、
・運動(機能)障害:股関節が動かしづらくなる
・変形障害:治療したものの、骨がきれいにくっつかなかった
・動揺関節:股関節が不安定になり、本来動かない部分が動いてしまう
・正常分娩機能の障害:女性の産道が狭まることで正常分娩が困難になる
・神経症状:痛みやしびれが残る
といったものに分けられます。

3 股関節骨折の後遺障害等級認定のポイント

(1) 運動(機能)障害

股関節の可動域に制限が生じる場合、可動域がどの程度制限されるかによって、後遺障害等級が異なります。

具体的には、股関節が全く動かない(強直)、または、自力で動かそうとしてもその可動域が正常な股関節に比べて10%程度以下の可動域となっている場合には、後遺障害等級8級7号が認定されます。
また、人口関節、人口骨頭を関節に入れても、股関節の可動域が正常な股関節に比べて2分の1以下に制限されている場合も同様です。

これに対し、股関節の可動域が2分の1以下の場合、または、人口関節、人口骨頭を関節に入れた場合には10級11号、股関節の可動域が4分の3以下に制限されている場合には12級7号が認定されます。

このように、人口関節、人口骨頭を関節に入れた場合、あるいはこれらを入れなかったとしても、可動域が4分の3以下に制限されている場合には、後遺障害が認定される可能性があります。

(2) 変形障害

変形障害は、股関節に著しい変形を残す場合に後遺障害等級12級5号が認定されます。
もっとも、著しい変形というのは、裸になったときに一見して股関節の変形が明らかである、という程度の変形を指します。
逆に、レントゲン画像で見てみれば変形が判明するものの、裸になったときに明らかに変形があるとまでは言えない場合には、後遺障害非該当となります。

(3) 動揺関節

動揺関節が不安定な場合には、股関節に硬性補装具(プラスチックや金属でできたサポーター)を装着することで対応するのが一般的です。
そして、後遺障害等級は、硬性補装具をどの程度必要とするのかによって決まります。
具体的には、硬性補装具を常時装着しなければ歩行できない状態の場合には後遺障害等級8級準用、常時装着の必要まではないが頻繁な装着が必要な場合には後遺障害等級10級相当、重激な労働などの場合にのみ必要としている状態、あるいは、頻繁に股関節の脱臼が発生する状態の場合には後遺障害等級12級相当となります。

(4) 正常分娩機能の障害

また、女性特有の後遺障害となりますが、交通事故によって骨盤骨折などにより産道が狭まることで、妊娠自体の機能に問題ないものの、正常分娩が困難になり、帝王切開等の対応が必要になる場合には、後遺障害に該当することがあります。
狭骨盤または比較的狭骨盤の場合に後遺障害等級11級10号に該当し、具体的には、産科真結合線が10.5cm未満、または、入口部横径が11.5cm未満の場合を指します。

(5) 神経障害

股関節骨折の治療が上手くいき、上記の障害が残らなかったとしても、神経の痛みやしびれが残る場合があります。
このような痛みやしびれが生じていることが、レントゲン画像や各種検査によって、客観的に神経症状の原因が医学的に証明できるようであれば、後遺障害等級12級13号が認定されます。
一方で、レントゲン画像などによって原因が証明できるとは言えないものの、痛みやしびれの症状が一貫しており、治療内容・頻度や交通事故の態様などの事情から、交通事故が原因で痛みやしびれが生じていると医学的に説明できる場合には、後遺障害等級14級9号が認定されます。

これに対し、被害者が痛みやしびれがあると訴えていたとしても、その症状が医学的に説明できるとはいえない場合には、残念ながら、後遺障害非該当となります。

4 股関節骨折の後遺障害慰謝料請求・後遺障害逸失利益

このように、股関節骨折による後遺障害は、症状がどの程度生じているかによって等級が定まり、後遺障害慰謝料の金額も等級によって異なります。
これに対し、後遺障害逸失利益は、基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数、という計算によって算出されます。
このうち、労働能力喪失率については、同様に、基本的には、等級ごとに基準が定められています。
以上をまとめると、以下のとおりとなります。

後遺障害等級 後遺障害慰謝料 労働能力喪失率
8級 830万円 45%
10級 550万円 27%
11級 420万円 20%
12級 290万円 14%
14級 110万円 5%


もっとも、上記の後遺障害慰謝料についてはいわゆる裁判基準であり、加害者側の保険会社から提示される金額は、これを大きく下回ることがほとんどです。
適正な賠償金を獲得するためには、弁護士のサポートを受けることをお勧めいたします。

5 適正な賠償金を獲得するための弁護士の活用

このように、どの後遺障害等級が認定されるかによって、その賠償金が異なるため、適切な賠償金を獲得するためには、実際の症状に見合った等級が認定される必要があります。
通常、股関節骨折の有無は、レントゲン撮影、CT撮影によって判断されます。
また、神経症状については、MRI撮影での画像所見や各種神経学的検査の結果を踏まえて診断されます。
なお、正常分娩機能の障害については、整形外科の医師による股関節骨折の診断の他に、産婦人科の医師による診断も必要となります。
そして、等級の認定にあたっては、これらの検査を基に医師が作成した後遺障害診断書が重要な判断材料となります。

もっとも、後遺障害診断書の内容として、どのような記載内容が適切であるのか判断できないという方もいらっしゃると思います。
また、医師によって、記載内容にばらつきがあり、必ずしも必要十分な記載内容となっているとは限りません。

このような場合には、後遺障害診断書を作成する前に、一度、交通事故を得意としている弁護士に相談されることをお勧めいたします。
交通事故を得意としている弁護士であれば、被害者の症状から、どのような等級が認定されるかについて見立てることができるため、後遺障害診断書作成にあたってのアドバイスをすることができます。
また、弁護士を依頼した場合であれば、後遺障害診断書の記載内容が実際の症状を反映していない場合など、後遺障害診断書の内容に疑義がある場合には、主治医に対して修正を働きかけることができます。

当事務所では、交通事故発生後から加害者に対する損害賠償請求までワンストップで対応しております。
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また、今後の治療・検査や、後遺障害等級認定、示談交渉・訴訟などの手続について、不安をお持ちになるのが通常であると思います。
適切に検査・治療や諸手続を進めて、適正な賠償金を獲得するためには、できるだけ早く弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
弁護士への相談が遅れると、不利な流れで手続が進んでしまうことも考えられます。

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