脊髄損傷とは
脊髄損傷とは、交通事故等を原因として、脊柱(背骨)に強い衝撃が加えられることにより、脊柱内にある脊髄を損傷することを言います。
脊髄は、脳とともに中枢神経を構成し、脳と体の各部位を繋ぎ、知覚・運動の刺激の伝達や反射機能を果たしています。
そのため、脊髄が損傷することによって、脳と体の神経の伝達に支障が生じ、麻痺や知覚障害などの様々な症状が現れることになります。
実際に診断書に記載される傷病名としては「脊髄損傷」のほか、損傷部位などによって「頚髄損傷」、「中心性頚髄損傷」、「胸髄損傷」、「腰髄損傷」、「仙髄損傷」などの診断名がつきます。
脊髄損傷の症状
損傷の程度から見た症状
脊髄損傷の症状は、損傷の程度に応じて「完全損傷」と「不完全損傷」に分けられます。
完全損傷とは、脊髄が横断的に離断(切断)し、神経伝達機能が完全に断たれた状態のものを指します。
この場合、損傷部位以下の機能が完全に麻痺するため、運動機能が失われ、感覚知覚機能も喪失することになります。
もっとも、全く何も感じないわけではなく、受傷部位から麻痺した部位にかけて痛みを感じることや、本来感じないはずの痛みや痺れ(幻肢痛等)を感じることもあります。
不完全損傷とは、脊髄の一部が損傷しているものの、一部機能が残っている状態のものを指します。
不完全損傷の中には、ある程度の運動機能が残っている軽症な部類から、運動機能は失われ感覚知覚機能だけが残った重篤な部類まで、様々なものがあります。
損傷の部位から見た症状
脊髄損傷の症状は、損傷する部位によって大きく変わります。
脊髄は、頭から下に向かって順番に、頚(けい)髄(ずい)(C1~C8)、胸(きょう)髄(ずい)(T1~T12)、腰(よう)髄(ずい)(L1~L5)、仙(せん)髄(ずい)(S1~S5)の小節に区分されます。
そして、各部位に損傷が生じた場合の主な症状は、次の表のとおりとなります。
損傷部位 | 主な症状 |
---|---|
上部頚髄 (C1~C4) |
呼吸筋の麻痺、四肢麻痺 |
下部頚髄 (C5~C8) |
四肢麻痺 |
上部胸髄 (T1~T6) |
体幹の麻痺、下肢の麻痺 |
下部胸髄 (T7~T12) |
下肢の麻痺 |
腰髄 (L1~L5) |
下肢の麻痺 |
仙髄 (S1~S5) |
膀胱・腸の制御機能の麻痺 |
*具体的な症状は、損傷の程度や個体差によって異なります。
脊髄損傷の診断
脊髄損傷の診断にあたっては、医師による問診や視診、触診のほか、画像診断や神経学的検査の結果も踏まえて、損傷部位やその程度が診断されます。
画像診断としては、XP画像診断やCT画像診断、MRI画像診断といった種類のものがあります。
XP画像では、骨折などの骨の異常が確認できますが、神経の状態までは把握できません。
そのため、脊髄損傷が疑われる場合には、CT画像やMRI画像により、損傷箇所の神経の状態を把握し、脊髄損傷の有無やその程度を把握することになります。
脊髄損傷の検査においては、この画像診断の結果が非常に重要なものとなります。
神経学的検査としては、スパーリングテストや、ジャクソンテスト、深部腱反射テストなど様々な種類のものがあります。
こうした各種の検査により、知覚障害の有無や程度、麻痺の程度、反射の異常などを検査し、脊髄損傷の範囲とその程度を調べることになります。
脊髄損傷のまとめ
脊髄損傷の被害を負った場合には、重篤な症状が残ることが少なくありません。
また、一度損傷した脊髄は、二度と再生・回復しないものであり、もとに戻ることはありません。
そのため、脊髄損傷によって生じた症状は一生残ることになり、被害者ご本人だけではなく、ご家族の今後の日常生活にも大きな影響を与えるものです。
したがって、脊髄損傷を負った場合には、適正な後遺障害等級の認定を受け、適切かつ十分な補償(賠償金)を受け取っていただく必要があります。
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