交通事故による脊髄損傷では、頚髄を損傷する例がよく見られます。
このページでは、交通事故による頚髄損傷の概要、後遺障害、損害賠償について、ご説明させていただきます。

なお、中心性頚髄損傷については、次の関連記事をご参照ください。

【関連記事】
●交通事故による中心性頚髄損傷

頚髄損傷とは

人の脊柱(背骨)の中には、脊髄と呼ばれる神経が通っています。
交通事故等により脊柱に強い衝撃が加わった場合に、脊柱内にある脊髄を損傷することがあり、これを脊髄損傷と言います。
頚髄損傷は、首の部分に存在する脊髄(頚髄)を損傷することを言います。

頚髄損傷の症状

脊髄には、頚髄のほかに、胸髄(胸の部分)、腰髄(腰の部分)、仙髄(お尻の部分)があります。
脊髄損傷は、損傷した脊髄の部位により症状が異なります。

頚髄は、頭から下に向かって順番に、C1~C8に区分されています。


そして、頚髄損傷では、損傷部位により次のような症状が現れます。

損傷部位 主な症状
上部頚髄
(C1~C4)
呼吸筋の麻痺、四肢麻痺
下部頚髄
(C5~C8)
四肢麻痺

また、胸腹部臓器の障害(尿路障害など)、脊柱の変形障害や運動障害などが認められることも多いです。

頚髄損傷による後遺障害

頚髄損傷による後遺障害は、その症状の程度に応じて、別表第1(介護を要するもの)の1級1号、2級2号、別表第2(介護が不要なもの)の3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号の等級が定められています。

【別表第1】

等級 内容
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの。
2級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの。

 
【別表第2】

等級 内容
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの。
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの。
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの。
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの。
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの。

頚髄損傷による損害賠償

交通事故により怪我をした場合には、傷害部分の損害項目と、後遺障害を残す場合には後遺障害部分の損害項目を請求することができます。

【傷害部分の損害項目】
治療費、入院雑費、通院交通費、休業損害、傷害慰謝料など。
【後遺障害部分の損害項目】
後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料など。

後遺障害慰謝料は、認定される後遺障害等級により金額が異なります。
頚髄損傷の場合の後遺障害慰謝料の額(裁判基準による標準額)は、次のとおりです。

後遺障害等級 後遺障害慰謝料(裁判基準による標準額)
1級 2800万円
2級 2370万円
3級 1990万円
5級 1400万円
7級 1000万円
9級 690万円
12級 290万円

 
後遺障害逸失利益とは、後遺障害による労働能力の喪失のために、将来にわたって失われる収入のことです(主婦・主夫の場合にも、家事労働に対する後遺障害逸失利益の請求が可能です)。
頚髄損傷の場合、後遺障害逸失利益を算出する基礎となる労働能力喪失率(労働能力を喪失する割合)は、後遺障害等級ごとに次のとおり標準値があります。

後遺障害等級 労働能力喪失率(標準値)
1級 100%
2級 100%
3級 100%
5級 79%
7級 56%
9級 35%
12級 14%

 
また、特に重篤な頚髄損傷の事案では、①自宅改築・改造費や新築費、②車両改造・購入費、③将来の介護費の請求が認められる場合があります。

弁護士にご相談ください

交通事故により頚髄を損傷した場合、後遺障害により将来の生活に多大な影響を受けることが想定されます。
十分な金額の補償を受け取ることが特に重要であり、そのためには適正な後遺障害等級の認定を受け、保険会社との示談交渉や裁判により適正な賠償金を勝ち取らなければなりません。

そのためには、交通事故に詳しい弁護士にご相談いただいたうえで、弁護士のサポートのもとに解決までの手続を進めるのがよいでしょう。
当事務所では、これまでに、交通事故・頚髄損傷に関するご相談・ご依頼を多数お受けし、解決した実績も豊富にございます。
交通事故による頚髄損傷の被害についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度、お気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。
失敗しない弁護士の選び方

脊髄損傷についてはこちらもご覧下さい

●脊髄損傷の被害で苦しんでいる方へ
●脊髄損傷とは?
●脊髄損傷による後遺障害について
●交通事故による頚髄損傷
●交通事故による中心性頚髄損傷
●脊髄損傷のケースでの損害賠償
●脊髄損傷の被害に遭われた方が生活費を確保する方法
●脊髄損傷のケースで弁護士を活用した方がよい理由

後遺障害についてはこちらもご覧下さい

●後遺障害(後遺症)とは?
●後遺障害の種類
●高次脳機能障害とは
●遷延性意識障害
●脊髄損傷
●交通事故のむちうち
●交通事故による腰部痛
●目の後遺障害
●耳の後遺障害
●交通事故による骨折
●手(肩~手指)の後遺障害
●足(股~足指)の後遺障害
●醜状の後遺障害
●各部位の損傷による後遺障害