1 交通事故の過失割合が10対0とは?

過失割合が10対0の交通事故というのは、事故の当事者の一方にのみ過失があり、もう一方には過失がない交通事故(いわゆるもらい事故)のことを指します。
過失割合が10対0の場合には、被害者は事故によって生じた損害を全額請求することができます。

これに対して、被害者であっても自身に過失がある場合には、その過失割合の分だけ請求額が制限されるのはもちろん、加害者側にも損害が生じている場合には、一部賠償金を支払わなくてはなりません。
例えば、被害者の車両の修理代が50万円で、加害者の車両の修理代が30万円という交通事故があったとします。
過失割合が10対0の場合には、被害者は加害者に対し50万円を請求することができ、加害者に生じた損害を支払う必要はありません。
これに対し、過失割合が8対2の場合には、被害者は加害者に対し40万円(50万円×80%)を請求することができますが、加害者は被害者に対し6万円(30万円×20%)を請求することができるため、差し引き34万円しか受け取ることができません。

このように、過失割合が10対0となるかどうかは賠償金額に大きく影響することになります。
ここでは、基本過失割合が10対0となる事故類型をご説明いたします。

2 過失割合が10対0となる四輪車同士の交通事故

(1)赤信号無視の交通事故

信号機のある交差点において、対面信号が青信号で交差点に進入した車両が、対面信号が赤信号で交差点に進入してきた車両に接触・衝突された場合、赤信号無視により、過失割合は赤信号で進入してきた車と青信号で進入していた車で原則10対0となります。

(2)センターラインオーバーの交通事故

センターラインオーバーにより対面車線を走行している車両に接触・衝突した場合、左側通行違反が認められるため、過失割合はセンターラインオーバー車と被害車両で原則10対0となります。

(3)後続車による追突事故

路肩や赤信号待ちで停車している際に後続車に追突された場合には、後続車に前方不注視があるため、過失割合は原則10対0となります。
なお、走行中に後続車に追突された場合も過失割合が10対0となる場合がありますが、急ブレーキや追越妨害がない場合に限られます。

3 過失割合が10対0となる自動車対自転車の交通事故

事故が発生した場合、自転車の方が怪我を負う危険性が高いことから、自転車側の過失が小さくなる傾向にあります。
もっとも、自動車と自転車の交通事故の場合でも、基本的には、過失割合が10対0となる事故類型は、四輪車同士の交通事故の場合と変わりません。

ただし、自転車が信号機のない交差点を直進していた際に、自動車がその後方から自転車を追い越すように左折をかけて接触・衝突した場合には、追越違反が認められるため、過失割合は自動車対自転車で原則10対0となります。

4 過失割合が10対0となる自動車対歩行者の交通事故

(1)横断歩道上を歩行中の事故

横断歩道上は歩行者が優先となっているため、歩行者が青信号で横断歩道を横断中に自動車と衝突された場合には、過失割合は自動車と歩行者で10対0となります。
これは自動車が交差道路を赤信号無視して衝突した場合だけでなく、その対面信号が青信号で右左折して横断歩道上の歩行者と衝突した場合でも原則同じです。
また、歩行者が横断歩道上を歩行中に黄色信号や赤信号に変わったとしても、横断を開始したのが青信号のタイミングであれば、歩行者の過失割合は0です。

さらに、歩行者が信号機のない横断歩道上を横断中に自動車と衝突した場合であっても、歩行者の過失割合は原則0となります。

(2)歩道上を歩行中の事故

歩行者が歩道上を歩いている場合、それが左側を通行している場合でも、過失割合は自動車と歩行者で10対0となります。

(3)歩車道の区別がない道路の右側歩行をしている際の事故

歩行者には右側歩行の義務があるため、道路の右端を歩行している場合には、歩行者の過失割合は原則0となります。

5 過失割合10対0を主張する場合の注意点

(1)保険会社の示談代行サービスを使えない

過失割合10対0を主張する場合の最大の注意点は、自分が加入している任意保険会社の示談代行サービスを利用することができない点です。
そもそも保険会社は、契約者に過失が発生する場合には、相手当事者に対し賠償金を支払う責任を負う立場にあります。
したがって、保険会社は相手当事者に対して支払う賠償金を少なくするために、相手当事者(相手の保険会社)と交渉をしているに過ぎません。

これに対し、過失割合10対0を主張するというのは、自分の保険を利用しないということを意味します。
実際に過失割合が10対0である事案であるかどうかにかかわらず、契約者が過失割合10対0を主張するという意向を示した場合には、保険会社は対応することができなくなります。
そのため、過失割合10対0を主張する場合には、自分で交通事故の専門家である相手の保険会社と交渉しなければなりません。

(2)賠償金の交渉が難しい

上記のように、過失割合10対0を主張する場合には、自分で相手が加入している保険会社と交渉していくことになります。
しかし、過失割合が10対0であるからと言って、相手の保険会社がそもそも適正な賠償金を提示するとは限りません。
特に、慰謝料や休業損害の金額については、複数の算定基準があり、それによっては大きな差が生じるのですが、最低基準である自賠責基準しか提示してこないことも珍しくありません。
この時、提示された金額の適否を判断できる方は少ないでしょう。
また、金額の上乗せを求めても相手の保険会社から相手にされない場合も考えられます。

6 弁護士にご相談ください

このように、過失割合10対0を主張する場合には、自分の保険会社は相手や相手の保険会社との間に入ってくれません。
そのため、過失割合が10対0を主張する場合には、特に弁護士に相談する必要性が高いと言えます。
弁護士に相談することで、提示された金額が適正かどうかを判断することができます。

また、相手の保険会社とのやり取りをすること自体ストレスに感じる方もいらっしゃると思います。
そのような場合には、弁護士に依頼することで、その後の交渉をすべて弁護士に任せることができるため、適正な金額を獲得することが期待できます。

交通事故の被害に遭われた場合には、一度当事務所にご相談いただければと存じます。

(弁護士・下山慧)

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